「こんな夜更けにバナナかよ」の著者 渡辺一史さんのタイトルを読みました。
今まで読んだ福祉本の中でベストの一冊です。
福祉関係者必読の書と言っても過言では無い素晴らしい本です。
その中で、脊髄性筋萎縮症で人工呼吸器をつけている海老原宏美さんが小池都知事に送った手紙に感銘を受けました。
その内容は、
「私たち、重度障害者の存在価値とはなんでしょうか。
私は、「価値のある人間と価値のない人間」という区別や優劣、順位があるとは思いません。
価値は、人が創り上げるもの、見出すものだと信じているのです。
樹齢千年の縄文杉を見て、ただの木でしかないのに感動したり、
真冬、青い空に映える真っ白な富士山を見て、ただの盛り上がった土の塊にすぎないのに清々しい気持ちになれたりと、価値を創り 出しているのは人の心です。
これは、唯一人間にのみ与えられた能力だと思います。
そう考えるとき、呼吸器で呼吸をし、管で栄養を摂り、ただ目の前に存在しているだけの人間をも、
ちゃんと人間として受け入れ、その尊厳に向き合い、守っていくことも、人間だからこそできるはずです。
それができなくなった時、相模原であったような悲惨な事件が起こってしまうのではないでしょうか。
あるのは、「価値のある人間・ない人間」という区別ではなく、
「価値を見出せる能力のある人間・ない人間」という区別です。
私たち、重度障害者の存在価値とはなんでしょう。
重度障害者が地域の、人目につく場所にいるか らこそ、「彼らの存在価値とはなんだろう?」と周囲の人たちに考える機会を与え、彼らの存在価値を見出す人々が生まれ、広がり、誰もが安心して「在る」ことができる豊かな地域になっていくので はないでしょうか?
重度障害者が存在しなければ、 そもそも「なぜ?」と問う人も存在せず、価値観を広げる機会自体を社会が失うことになります。
それこそが、重度障害者の存在価値ではないでしょうか?
重度障害者は、ただ存在しているだけで活躍しているとは言えませんでしょうか?
私は、そういう意味で、重度障害者の活躍の場を、 社会の中に作っていきたいのです。
どんな重度の障害者でも、安心して地域に在ることができる社会にしたいのです。」
まさに、この本のタイトルを表現する障がいのある当事者にしか言えないメッセージが的確に伝わってきて、胸をうちました。
異業種からこの業界に入って感じるのは、もっともっと我々自身が利用者さんの価値を見出す能力を発揮すべきでは無いのかという疑問です。
この人にはこれしか出来ないと思い込み、単純な作業・仕事を押し付けている会社が多すぎるのでは無いかと、思います。
弊社でも珈琲豆の焙煎やアクセサリー作りが苦手な人がいます。
その人を野菜作りに連れていくと、全く違う顔で生き生きと仕事をしています。
あぁ、この人はこんな才能があったんだ、と改めて気づかされます。
海老原さんの手紙を読んで、我々ももっともっとしょうさんの価値を見出すべきと思いました。
この本に出会えたことに感謝します。